Columns

焼酎スタイリストyukikoの蔵見学レポート
<井上酒造編>

焼酎スタイリストyukikoの蔵見学レポート<br><井上酒造編>

焼酎スタイリストyukikoです。宮崎県日南市南郷町にある井上酒造に伺いました。代表銘柄である芋焼酎「爽 飫肥杉」(さわやか おびすぎ)のラベルデザインは地域性が色濃く出ている銘柄のため、以前から私の専門分野でもある商品色彩の観点からも興味深く感じていた酒造蔵です。今回、井上酒造の周辺環境や飫肥杉もしっかりと見てきました!皆さんが井上酒造の銘柄を楽しむポイントも蔵見学レポートとともに紹介します。ぜひ参考にしてみて下さいね。

■宮崎県を象徴する木「飫肥杉」とは?商品名に込めた造り手の思い

井上酒造の代表銘柄にも付けられている飫肥杉とは、宮崎県の南東部にある日南市を中心に生息している杉です。1623年に飫肥藩の藩財政の窮乏を救うために藩主 伊東祐慶の指示により植林が始まったとされています。
生育が早く、油分を多く含んでいるため吸水性が低く、加工がしやすい点から造船用として使用されていました。

左の写真のようにきれいな三角形のシルエットが飫肥杉の特徴です。密集地を上から見るとミステリーサークルのように見えるのも飫肥杉ならでは。井上酒造の周辺にも見渡す限りの飫肥杉が生育しています。

井上酒造の周辺にも見渡す限りの飫肥杉が生育しています。代表銘柄「飫肥杉」の由来は、飫肥杉が持つ柔軟性やしなやかさ、逆境にも負けずにまっすぐ伸びて成長する特徴を重ね合わせたものです。地域性と造り手の思いをのせた銘柄なのです。

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント①湧き水

芋焼酎「飫肥杉」の愛飲家の方は口をそろえて「口当たりが柔らかくて飲みやすい」と語ります。その理由のひとつがこの湧き水です。井上酒造の仕込み水や割り水は、敷地内に湧き出ている「榎原湧水」を使用しています。蔵の近くで降った雨水が山で濾過され、敷地内に湧き出てきます。この地下水を用いて焼酎瓶を洗ったり、ボイルを炊く時に使用するため、水を多く使う時間になると貯水池に湧き出る水が少なくなるという面白い現象が見られます。

私が蔵に到着した時はちょうど水を大量に使用する作業を行っていたらしく、湧き水もちょろちょろと細い線を描く程度しか流れていませんでした。30分後……作業が終わると写真のように水が湧き出てきました。

今回、この湧き水を飲ませてもらいました。柔らかくて身体にスッと浸透してくるような感覚があり、とても美味しい!水好きとしては、持って帰って自宅でも飲みたくなるほど!芋焼酎「飫肥杉」ファンの方々が「口当たりが柔らかくて美味しい」という理由も納得です。この湧き水はどなたでも飲めるそうなので皆さんが井上酒造を見学される際には、必ず湧き水の美味しさと湧き出る量をチェックしてみて下さい。

■麦焼酎の仕込みを見学!もろみの変化に興味津々!

麦焼酎の製造現場を見学しました。井上酒造ではオーストラリア産の麦を使用しています。1袋450㎏あり、1回の仕込みにつき2袋(900㎏)使用しているそう。

麦麹を造る1次仕込みは、麦と水と酒母を入れて発酵させます。もろみがボコボコと活発に発酵している様子が見られました。井上酒造では麦焼酎の1次仕込みに5日間かけます。タンクに手を入れてチェックしている写真は3日目の1次もろみです。

2次仕込みでは、1次仕込み で出来上がった麦麹900kgと2次仕込み用の掛け麦1800kgを合わせて合計2.7tの麦を使用しています。麦が持つ自然の力だけで発酵させ、11日間かけて2次仕込みを行っています。

2次仕込みで私が興味深く感じたのは4日目のもろみです。4日目から表面が黄色っぽくなってきているのです。これは麦が持つ油分が出てきたサインでもあり、井上酒造が造る麦焼酎の“旨み”となる部分です。最終的には飲みやすさや美味しさを考え、油分を調整しながら濾過を行います。

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント②芋焼酎初の取り組み

井上酒造は、減圧蒸留100%の芋焼酎造りを最初に行った蔵です。多くの芋焼酎は常圧蒸留という古来より受け継がれてきたオーソドックスな蒸留方法で造られています。飲む時に原料のさつまいも本来の旨みや飲みごたえをしっかり感じられる特徴があります。一方、減圧蒸留は常圧蒸留よりも気圧を下げて蒸留を行います。井上酒造の代表銘「飫肥杉」も減圧蒸留によって造られた芋焼酎です。芋の風味が軽やかになり、口当たりもすっきりとした酒質に仕上がります。これが「飲みやすくて美味しい」と多くのファンが語るポイントにつながっています。

井上酒造には減圧蒸留を行うための蒸留器 が3台 あります。すべて常圧蒸留も行える併用型で、わたりの部分も含めてステンレス製です。この蒸留器が並ぶ空間は、井上酒造がこだわる酒造りのポイントを知ることができる場所ですので、皆さんにも必ず見てほしいですね。

■まるで飫肥杉の森のよう!出荷を待つグリーンボトル

芋焼酎「爽 飫肥杉」のラベルが貼られ、出荷を待つ瓶がずらりと並んでいます。「爽 飫肥杉」の特徴は杉のイメージを彷彿とさせるグリーンのボトル。こうやって並ぶと、飫肥杉の森のようです。良質な水と緑が豊かな地で育まれた井上酒造の焼酎は、このような工程を経て飲み手の皆さんのもとへ届けられます!

■必ずここを見て!焼酎スタイリストyukikoのおすすめポイント③水を活かしたチョウザメの養殖場

井上酒造では敷地内にチョウザメの養殖場があります。水質が良い環境は酒造りだけではなくチョウザメ養殖にとっても適した環境なのです。宮崎県では1983年からチョウザメ養殖研究に着手し、2004年に完全養殖に成功しました。
チョウザメは形状がサメに似ていることから、サメの一種と思われている方も多いのかもしれませんが、実はサメとは異なるチョウザメ科の古代魚。海に生息するサメとは異なり、川や湖に住む淡水魚なのです。体表にある硬いウロコが蝶のような形をしていて、全体的なシルエットがサメに似ていることから「チョウザメ」と呼ばれています。

チョウザメは雄雌の区別がつきにくいため、約3年後に雄雌判別を行います。そのあとは雄と雌でいけすを分けて育てます。雌しかキャビアは採れませんし、出荷できるまで一般的に8年かかるといわれています。個体差があるため10年かかるチョウザメもいるそう。チョウザメを育てている環境を実際に見学すると、キャビアが高級品といわれる理由がよくわかります。

井上酒造では焼酎造りと同様に長期にわたって大事に育て、より質の良い商品化を目指しています。焼酎蔵の敷地内にあるチョウザメの養殖場も珍しいので、井上酒造に行かれた時には必ず見学して下さいね!

■宮崎県日南市の 新たな特産に!井上酒造の本格焼酎と「美味しいコーディネート」

日本ではキャビアは知られていてもチョウザメの魚肉を食べる文化があまりないため「キャビアフィッシュ」の認知度はまだ低いかもしれません。海外ではキャビア同様にキャビアフィッシュも高級食材です。王族や皇帝が好んで食べたともいわれる淡泊で美味しい白身魚です。今回、私も井上酒造の本格焼酎と一緒にキャビア、キャビアフィッシュを食べてみました。

  • ① 日南発(ひなた)キャビア 20g/8964円(税込)

    宮崎の名水21選に選定された「榎原湧水」を用いて、大切に育てたチョウザメから採れた卵をじっくり熟成させたものです。国内産キャビアとしてプレゼントにもおすすめです。

  • ② キャビアフィッシュの燻製 50g/864円(税込)

    キャビアフィッシュは高タンパク・低脂肪・低カロリー。この燻製は桜のチップで時間をかけて、ゆっくりと燻製・熟成を繰り返して作られたものです。臭みもないため、サラダやカルパッチョなどでさっぱりと美味しくいただけます。日常のおつまみにもおすすめです。

■焼酎スタイリストyukikoの「井上酒造おすすめメモ」

もともと水好きでもあるので、芋焼酎「飫肥杉」の口当たりの優しい酒質を生む仕込み水にもとても興味があって伺いました。國酒取材で多くの蔵の仕込み水を飲んでいますが、そのなかでもトップクラスの柔らかさ、身体にスッと入ってくる心地よさを持った水です。井上酒造のお酒を楽しむうえで最も贅沢なのは敷地内に湧き出る「榎原湧水」を使ってロックや水割り、お湯割りを飲む1杯なのではないかと思ってしまうほどです。ぜひ皆さんもお近くに行かれる際には井上酒造の水、それで育ったチョウザメにも注目してみて下さいね!

■yukikoプロフィール

焼酎スタイリスト®、ファッションスタイリスト。色彩総合プロデュース「スタイルプロモーション」代表。全国の自治体や蔵元と連携して、スタイリストとして日本のお酒「國酒」を“流行×オシャレ”に発信。トレンドや美容情報に精通し、ファッション誌やビューティー誌にも登場。”時流”を掴んだお酒のコメントやアドバイスには定評がある。全国で講演や焼酎泡盛講師・レシピ監修・イベントプロデュース・企業研修などを務める。大学の講師として教育分野にも従事。販促色彩・ビジュアルプロモーション・ブランド構築を専門とし、日本各地の伝統文化や地域文化産業を東京からサポートしている。